夢は雲のように
はるか昔に卒業した中学校の卒業文集に、みんなの夢をかくコーナーがあった。
みんながサラリーマンとか先生とか、自由に夢を書いている中で、私は「雲になりたい」と書いた。
文集を開かずとも今でも一言一句覚えている。
「みんなを上から眺めてふわふわしていたい。」
今日風呂掃除をしながら、「あ、夢叶ってるな。」と思った。
電気を消して布団で暗闇の中、仰向けでじっとしている。
何も見えないし聞こえない。静かで何も流れない時間。
そんな中、いきなりオレンジ色の小玉電球がフッとつく。
小玉電球が視界の中に現れて、自分の目が開いていることに気がついた。
「あ、私の目は開いていたのか」
そんな感じの静かな驚きがあった。
当時はニートになりたいなんて1ミリも思っていなかったし、「普通」から外れた道に行くとも思ってなかった。
でも、ニートでいることは自分に似合っていると思う。自分のことも決められず、空想ばかりして他人に興味がない自分は、ニートであることに違和感は全くない。ふさわしい。
でもこんな風に叶う夢は、汚い夢だと思った。
夢というのは、それに向かって頑張って一直線に努力する、キラキラしたものだと思っている。夢のために人は輝いたり、荒々しくなったりする。夢を追いかける人は美しい。
私の夢は叶っていた。
夢はこんな形でも叶ってしまうのか。
でも、幸せじゃない。
無理があるし、自分に自信をもたらさない。誰かを幸福にするものでもない。自分の人生を後押しして、進もうとする背中を温めてくれるものでもない。ただ履歴書の空欄を増やしてくれる。
叶ったことで達成感があるわけでもない。
夢が苦手だ。