友情の渇望

 

ものすごく雑に、四捨五入のように乱暴に表現すると、友達がいない。
今連絡を取っている人は幸い2・3人いるけれど、向こうは私のことを友達だと思ってくれているだろうか。
一時期は仲が良かったかもしれないが、関わる時間が減っていくとともに友達から知り合いに格下げされているのではないか。
そんなことを考えると、自分から連絡をとっても相手に迷惑なのではないかと思ってしまい、連絡を取るのを控えてしまう。
 
彼女や彼氏が欲しいと思ったことはないけれど、友達が欲しいと思ったことはある。
困ったら相談して、一緒に泣いてくれるような、「友達」。
くだらないことも、人に話せないようないいにくいことも話せる「友達」。
そんな「友情」に昔から憧れていた。
子供が成長するにつれ感じる「恋がしたい、恋人が欲しい」という欲望に似ている。美しく麗しい人間関係に憧れ、それを獲得したいという気持ちだ。
「美しい友情」が欲しかったのだ。
 
子供の頃からほとんど、友達と喧嘩したことがない。
思い返せば、気まずいことを言ってお互いに空気が何となく悪くなったり、幼い頃は口をきかない程度のことはあるけれど、自分の主張をして言い合いになったこと、喧嘩らしい喧嘩は殆どしたことがない。きっと自分自身の主張する意欲が弱いのだ。
人と関わって傷つくのが怖いから、主張しないほうがいい。 何も言わないほうがいい。
 
幸い、私と会話をしてくれる人はいた。それはそれで十分幸せだ。彼らはこんな自分と会話をし、一緒にプロジェクトをこなし、食事をして、遊びに行ったりしてくれる。
だけどそんな関係の人たちが、私より親しい自身の「友達」について話す時、嫉妬と羨望が頭をもたげる。
「私とはそんなことをしてくれないのか。」
「私のことは友達だとおもってないのか。」と。
つくづく自分は面倒くさい人間だと思うし、こんな自分に関わってしまわないほうが、相手にも利益だから余計に人と関わるのを避けている。
ここ7年ほど、人間関係を避け、時には断つということを続けてきたおかげで、人と知り合ったあとどのように仲良くなればいいのか、どこまで気を許せばいいのか、どこまで分からなくなってしまった。
それで、去年は人と距離感を近づきずぎて失敗したことが何度もあった。
あったばかりの人に仲良くなりたいと焦って、急に距離を詰め近づき過ぎると、ヤバイ奴だと思われる。あるいは、人と関わり慣れていないから、積極的な性格を演じると、あとからキャパシティの限界がきて一切人と関わることができなくなる。
友達になりたいと思う人と出会っても、どうすれば友達になれるのかがわからない。
だから当たり障りなく、薄い人間関係で、敬語のまま近づきすぎず遠すぎずを保っていくことしかできない。
全く進展のない人間関係で、それはきっと友情は生まれないのだろう。
 
恋愛を放棄し面倒臭がる女性をさす「干物女」という言葉があるが、私はさしずめ「友情の干物人間」だ。
友情を育てられる下地が私にはない気がする。でも、私は未だに友情に憧れ、渇望している。
この渇きに苦しまなくなる時がくるのだろうか。
そんなことを考えてばかりいる。

仲間はずれのイラスト（棒人間） | かわいいフリー素材集 いらすとや